人権と平和の理念実現へ
世界と連帯し難局を克服
73回目となる憲法記念日は、新型コロナウイルス禍との戦いの中で迎えました。グテレス国連事務総長は、コロナ禍を「国連の歴史で経験したことのない地球規模の健康危機」と訴え、国際的な連帯で立ち向かうよう求めています。公明党も全く同じ思いです。人類の生存のために世界と連帯することは、日本国憲法の精神である国際協調主義の理念にも合致します。
また、この難局に対し、生存権を保障した憲法の真価をどう発揮させるかが問われています。
日本は現在、コロナ禍に対して全国に緊急事態宣言を発出し、移動や営業の自粛を国民に要請しています。こうした私権の制限は、「国民の権利については公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めた憲法13条などからも、必要最小限で合理的な範囲内で是認されるものと考えます。
私権の制限に関連して、憲法改正によって緊急事態条項を創設しなければならないという意見もありますが、わが国の危機管理法制、例えば、今回の改正新型インフルエンサ等対策特別措置法や災害対策基本法など個別の法制の中で議論を進めるべきでしょう。
また、緊急事態宣言によって多くの権限が都道府県知事に与えられ、地方と国、地方と地方の協力で感染を抑え込む努力が続いています。地方の知恵が発揮され、憲法の「地方自治の本旨」の理念がより深まることが期待されます。
さらに、誤った情報が拡散され社会に混乱を招いたり、また、濃厚接触者を追跡するためのスマートフォンの位置情報の活用も話題になっていますが、これらは「表現の自由」や「プライバシーの権利」に関わります。憲法上の今日的な課題として議論を進めることが必要ではないでしょうか。
緊急時にあって国会の機能をどう維持するのかも問題です。例えば、憲法は衆参両院ともに「総議員」の3分の1以上の「出席」がなければ「議事を開き議決することができない」と定足数を定めていますが、感染症や大災害の発生で国会議員が集まれない場合どうするのか。その解釈が問われています。
さらに、国政選挙が実施できなくなる場合もあり得ます。国会議員の任期は憲法に明記されているため、任期延長には憲法改正が必要と思われます。緊急時にこそ国会は立法府としての役割を果たす必要があると考えると、こうした課題を議論することも大切です。
さて、今回のコロナ禍では、グローバル化の影響が強く現れてました。わずかな期間にパンデミック(世界的大流行) が引き起こされ、国際的な移動制限の影響は計り知れず、経済・社会分野での混乱も深刻です。だからこそ、世界が連帯して解決をめざすことが求められます。とりわけ、国際機関との協力や医療分野のな開発途上国への支援は不可欠です。
私たちは、コロナとの戦いを通して世界が連帯の道を探り、打ち勝っていくことで、地球温暖化対策や核廃絶、難民の排斥など世界的な問題の解決にもつながる″連帯の潮流″が生まれていけばと期待しています。
公明党は、人間主義の哲学に基づき、憲法が定める人権と平和の理念を実現するために、取り巻く諸課題に全力で取り組んで参ります。
2020年5月3日公明党
2020年5月3日付 公明新聞より